第85回(2007年1月1日)*夜のカフェテラス
今年の冬は日本もヨーロッパも暖冬で、12月のオランダでも秋のよう。
春になってから、と思っていた「クロラーミューラー美術館」へ行ってきました。
改築のため、しばらく閉館していたのが2006年4月に再オープンしたのです。
場所はオランダのど真ん中、国立公園の中にあります。
公園の敷地は5000ヘクタール、入り口は3箇所だけ。
その日は朝からアムステルダム(Amsterdam)のアンティークフェアへ行き、
車で2時間走ってアッペルドールン(Apeldoorn)へ骨董探しに行った。
目ぼしい物は無かった。
骨董はあきらめて、南に下ってアーンヘム(Arnhem)方向へ移動。
高速を走っていると "Hoge Park" "Kroller-Muller" の標識がある。
標識に沿って細い道をたどると、もうすでに森の中に入った景色になる。
時速100kmで30分くらい走ると公園入り口の標識があって、そこから又、車で少々走る。
あちこち回ったので、公園に到着したのは夕方の4時。
入り口に駐車場があり、車を置いて自転車を借りることもできる。
春ならお弁当を持って、森の中をサイクリングも良さそうだ。
受付で「クローラーミューラー2枚」というとチケットは30ユーロ。
人間が公園と美術館へ入るのが1人12ユーロ、車の入場料が6ユーロ。
「美術館はどっち?」と聞くと
「この道を9km先」と言う。
9kmを京都で考えると、京都駅から北山通りまで。
車が1台走れる細い道で延々と森の中を走る。
冬の日暮れは早く、周りは薄暗くなってきた。
少し小雨も降って、人も車も動物の姿も無い。見渡す限り、森と平野が続く。
本当に嫌になるくらい広い。
4時半頃に美術館に到着、閉館は6時なので、時間はある。
美術館前に止まっている車は3台、館内はガラガラだった。ラッキー。
庭園には大きな彫刻が展示してある。
森の木が巨大なので、点在する大きな彫刻も良い感じに溶け込んでいる。
ヘンリームーアの作品もある。
館内にはオランダの画家を中心に絵画や彫刻がある。
ジャコメッティの細い叔父さんも居ますよ。
ここへ来たお目当てはゴッホの「夜のカフェテラス」。
黄色い壁が印象的なカフェの絵です。
誰も居ない部屋で椅子に座って好きな絵を見る。
すごい贅沢な気分でメチャメチャ嬉しい。
「今日、ここに来て良かったー」
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クロラーミューラー美術館はゴッホの作品を300点も持っていて、順繰りに展示している。
年間パスを買って通う人もいる。
公園は「ゴッホの森」と呼ばれている。
12月のオランダは日の入りが早く、5時には真っ暗になる。
北の出口まで4km、そこから高速でアムステルダムまで1時間半。
仕入れで海外に行ったついでに美術館へ行くのが楽しみです。
作品をガラスや柵で仕切ってあることは滅多に無い。
絵画とツーショットの写真もOK。
展示する側は観に来る人を信頼しているし、観る人は信頼に応えて真面目に観る。
日曜日にアムステルダムの国立美術館へ行きました。
日曜日は午後1時からの開館で、地元の人や観光客で満員。
建物の大部分を工事中で閉鎖のため、入れる部分は普段の1/5程度。
主なる展示品だけを集めて、ダイジェスト版のようになってました。
古いデルフトやマッカムの陶器、日本から渡った古伊万里、金工細工や鉄砲など。
高さ2メートル以上もあるドールハウスは小さな調度品まで精巧に作ってある。
特別展はレンブラントで最盛期の油絵、ドローイングが2部屋に展示してあった。
各部屋にパンフレットが置いてあり、解説を読みながら自由に見て周れる。
人が沢山居ても、気にならなくて自分のペースで観ることができて良かった。
いつも思うのだが、オランダの光は日本の光と違う。
オランダらしい空は低い雲が立ち込めていて、その隙間から光が何本も漏れてくる。
雨雲ではない、灰色の低い雲がムラムラとあって、その下に教会の塔がある。
絵画を見ると、そんな空を思い出す。
by mikiris
第86回(2007年2月1日)*ロンドンでアンティークを買う
久しぶりにロンドンへ行ってきました。
昨年の5月に行ったのが10年ぶりでしたが、滞在期間が土曜日の1日だけ。
アンティークマーケットのポートベローを目当てでした。
今回は月曜日の夜に到着して土曜日にオランダへ移動する迄の5日間。
これだけあると、かなり色々な事ができる。
友彌人と私が二人で仕入れに行くと、私は田舎係、店主は都会係です。
いつも、私は7時頃の電車で遠いところへ仕入れに行く。
電車に乗って景色を見たり、本を読んだり、ボーっとしてるのがとても楽しい。
地方で用事が済んだら、さっさと帰ったら良いのですが、美味しそうな店を見つけたり、
ショッピングセンターを見つけると、つい、寄り道したくなる。
ロンドンに戻るのが夜8時頃に。
こんな日は駅のスーパーでサンドイッチと飲み物を買って帰る。
10年前は、ロンドンというと、早朝の露天から始まった。
5時か6時にホテルを出て、地下鉄で路上マーケットに行く。
月曜日はコベントガーデン、水曜日はエンジェル、
木曜日はカムデン、金曜日はバーモンジー、土曜はポートベローで日曜日はホテルフェア。
その他、水曜日にバースへ行ったり、近郊のフェアやアンティークセンターへ出没して
精力的に動き回っていた。
店で扱う商品が変化してきたし、ロンドンに寄らず、エジンバラやグラスゴーに直接飛ぶようになったのと、
ドイツやベルギーに行く回数が増えて、ロンドンから足が遠のいていました。
「久しぶりに行ったら、ええもんがあるかも知れへん」
昔を思い出して、露天とアンティークセンターを周ってみました。
しかし、エンジェルのアンティークセンターは取り壊されて、露天も閑散としている。
周りの店もすごく少なくなった。
アンティークモールも出店が激減。
エンジェルの駅近くに「The Mall」があって、ここは全店埋まっている。
綺麗なシェードの専門店、ラリックなどデコのガラス専門店、根付や和骨董の店、
マイセンを中心に美しい磁器を扱う店、地下は家具の店が入っている。
店も品物も充実している。
バーモンジーはポートベローに次ぐ大きな露天だったが、こちらも大幅に縮小していた。
ロンドンブリッジの駅から徒歩で10分。
公園のような広場がマーケットの場所。
昔は広場と大きな建物、周りに小さなモールや店があって、朝の5時には業者やら観光客でごった返していた。
掘り出し物を探しに来る人でいっぱいだった。
数年前に大きな建物が取り壊され、その中に入っていた店はエンジェルやグレー、ポートベローに移った。
アンティークショップが詰まっていた建物は再開発の真っ最中。
現在は小さな広場で露天が開かれているが、ジュエリー(安いやつ)と銀やめっきの食器を売る店が中心。
「朝、早ようから行って損した」が率直な感想。
帰り道に公園の斜め前で「アンティークマーケットは何処?」と道を聞かれた。
目の前のマーケットに気づかないなんて、私達のように久しぶりに来た人だったのか。
土曜日のポートベローは相変わらず活況。
路上のテントが減った分、建物の中の細長いモールが増えた感じ。
隣のモールとつながっているところもあるし、1軒だけで地下、1階、2階に店が入っている所もある。
とにかく、誰かと一緒に出かけても、別々にモールに入るとはぐれてしまう。
私も友彌人も携帯を持っているけど、
「今、何処ー?」と電話しても、自分の居場所が分からない。
友達とはぐれたら、とにかく道路に出る。
1本道なので、道路に立っていると、又、巡り合える。
昼間は地下鉄スローンスクエアからキングスロードを真っ直ぐ、(バスならタウンホール前で降りる)
「アンティクオリアス」とその向かいのアンティークセンターへ行ってみる。
グラスや陶磁器、ジュエリーや時計、銀器、絨毯やら色々なオブジェを売る店が入っている。
地下鉄ボンドストリート近くの「グレイ」と並んで、あらゆる種類のアンティークを売っている。
イギリスのアンティーク屋さんは専門店化している。
布を扱う店、ジュエリー専門店、エンブレム物、ブルー&ホワイトの専門店、
エフェメラと云うのだけどバレンタインカードなどの紙物を扱う店。
銀器には特別な扱いがあって、ボンドストリートやチャンスリーレーンに銀専門店のアンティークセンターがある。
クレジットカードも使える店なので、当然、免税もきく。
掘り出し物を見つけて、値切って、カードで免税。
これも良いお買い物方法かも知れない。
以上は時間がないときのお手軽コース。
もう少し、本格的にアンティークを買うなら、ロンドンから郊外に足を伸ばすか、
年に数回のアンティークフェアに合わせて旅行の日程を組まなければならない。
年に3回、ロンドンのオリンピアで上等なアンティークフェアがある。
真面目な店で真面目な骨董品を取り扱う店しか出られない。
出店する店も自慢らしく「私はオリンピアに出しているんだ」と店のショーウインドーにシールを貼っている。
他にもロンドンで年に数回、あちこちで上等なアンティークフェアがある。
特設テントを会場にして、入場料が20ポンドもするフェアもある。
郊外の大きなフェアは主催がDMGのが有名。
南のアーディングリー、北のニューアーク、各地で年に4-8回の大きなフェアを開催している。
ロンドンに泊まって、一日だけレンタカーを借りて往復しても良いし、
早朝にマーブルアーチからコーチに乗って行く方法もある。
骨董品の良いものは流れ流れて大都市にたどり着く。
高くても、時間と労力を惜しむならロンドンのアンティークセンターやオリンピアのフェアで買える。
自分の目と足で好きなものを見つけたい方は是非、郊外の大きなフェアに行ってください。
きっと、宝物と出会える。
こんな夢を持って、旅のプランを練るのも楽しい。
by mikiris
第87回(2007年3月1日)*ハッピーリタイア
団塊の世代がリタイアするのが話題になってるけど、
日本だけじゃなくて外国でも同じ。
第二次世界大戦後のベビーブーム生まれの人達はベビーブーマーと呼ばれてる。
やっぱり人数が多い。
昨年、ベルギーの友達のお兄さんがリタイアした。
彼は繁華街で骨董屋を開いていた。
店を売って欲しいというオファーがあり、提示された金額が高かったのでOKした。
店はエルメスやらポールデルボー、セリーヌのブランド店が並ぶ通りにある。
きっと、ここも何か有名なブランドのアンテナショップになるのだろう。
お兄さんはモナコに別荘を持っていて、夏はそこで過ごしている。
今年65歳なので、これを機会にリタイアして1年の大半はそちらで過ごすそうだ。
友達も骨董屋だけど、こちらは卸売り専門。
骨董品の輸入卸だと、海外に仕入れに行くとき、コンテナが入る時が忙しい時間で
平日は卸売り先の小売店やらインテリアコーディネーターが約束をとって訪問するくらい。
彼もそろそろ引退を考えている。
飛行機に乗るたびにビジネスクラスでもらうプレゼントの置物、これが棚いっぱいになったらやめるそうな。
こんな区切りのつけ方も有るんだ。
フランス人の友達はパリで仕事をしていたが、60歳で定年を迎えて、ニースで暮らしている。
こちらも同じく、若いうち別荘を買ってバカンスに使っていたが、退職後はそっちに引越しした。
夏場は観光客が多いけど、その他の時は一年を通じて気候が良く、魚も野菜も果物も美味しくて過ごしやすい町だ。
リタイアした人が沢山住んでいて、集まってスポーツなどを楽しんでいる。
友達夫婦は頻繁に旅行にも出かけている。
イタリア、東欧、フランス国内と車や列車で出かけてる。
こんなのがヨーロッパの人達の理想の生活。
皆、元気で楽しい老後を好きな場所で過ごしたい。
商売をしていると定年がない。
骨董屋にも定年がないと思っていたが
「○○歳になったら、この店の品物をまとめて売って、店を閉めるんだ」
「私はお金が○○だけ溜まったら店をやめて、暖かいところに引越しする」
「私は仕事をやめたら、あちこち旅行に行くんだ」
と聞こえてくる。
大抵の人は死ぬまで働くなんて考えがない。
有る程度で区切りをつける算段だ。
そういえば、仕入れでヨーロッパ各国を回って、骨董店が減ってる。
アンティークセンターも借りる人がなくなって閉鎖されてるのが多い。
リタイアしている人が多いのかなー。
骨董屋は他の商売と違って、本人次第で忙しくも暇にも過ごせる。
若いうちに買い集めた骨董品を元手に店を開く人もいる。
そう思うと好きな骨董を買うのにも力が入る。
オランダの友達で定年後に骨董屋になったのが3人ほどいる。
元気に走り周って仕入れをガンガンする人。
開店した店に友達やらがしょっちゅう来て、それなりに楽しそうで忙しそうな人。
骨董祭や露天に出店して頑張る人。
それぞれ、マイペースでやってる。
仕入れるものも売るものも、同じものが二度とないのが面白いところ。
リタイアしてモナコやニース、日本人でも海外プチ移住して暮らすのも良いけど、
骨董屋になるという考えも捨てがたい。
日本では今後、骨董屋は増えるのか減るのか、
私の予想では増えそう。
by mikiris
第88回(2007年4月1日)*五十肩
30代でなるのが四十肩、40代でなるのが五十肩だそう。
去年の夏に友弥人がぎりぎりアウトで、五十肩になりました。
毎日PCをやったり、重い荷物を運んだりして、目、肩、腰がちょっと痛くなった。
そのまま続けていると、もう少し肩こりと腰痛がひどくなってきた。
サウナへ行ったり、マッサージへ通ったり、クイックへ行ったり。
骨董屋さんは見かけによらず重労働だ。
箪笥を運んだり、大きな壺を動かしたり、お皿だって何枚にもなると重い。
仕入れの時も、配達の時も、骨董祭やらデパートに出店する時も、まるで引越しのよう。
時間制限もあって、エイヤッとかなり無理をする。
そんなこんなで、腰を痛めたり、腕を痛めている骨董屋さんは結構居る。
聞くと、大抵マッサージやスイミングスクールに通ったりしてる。
近頃はネット販売やらネットオークションに参加している店も多く、
目から来る肩こりと運動不足に拍車がかかる。
友弥人は半年間、病院のリハビリと友達に紹介されたマッサージ屋さんに通った。
悪くはならないけど、あんまり良くもならない様子。
代わりにタイルの入った箱を運んだり、荷物を動かす重労働をやっていたら
今度は私も肩こりがひどくなってきた。
片腕がしびれて、他所の人の手の感じがする。
もう一方の手に比べて、とっても冷たい。
家に試供品でもらった「蒸気温熱パワー」なるものがあったので貼ってみた。
いままで、こんな物が嫌いだったけど、使ってみると調子がいい。
その部分に暖かい蒸しタオルを当てている感じ。
よくある使い捨てカイロとは全然違う。
値段も全然違う。
ホカロンなら10個 198円で売ってるけど、蒸気温熱は10個で1,000円。
5倍もして、すごく高いけど、やっぱり全然違う。
普段はケチ子の私だけど、ここは京都人。
出すときは出す。
どどーんと4箱買いました。
友達が勤めている薬局で買ったのですが、その時に肩こりシールの試供品をくれた。
使ってみたら、よく効く。
小さな丸いシールを1枚貼ったら、翌日から肩こりと腕の痺れが消えた。
早速、友達の薬局へ行き、つぼシールを購入した。
私の様子を見て、友弥人も早速、つぼシールを貼りだした。
こっちは半年以上続く五十肩で、肩より上に腕が上がらないくらいひどい症状。
肩こりにも年季が入っている。
一度につぼシールを8枚ほど貼ってる。
このシールの難点は膏薬くさいこと。
昔のお婆の臭いがする。
身体の臭いは他人にはわかっても、本人は以外に気が付かないもの。
シールを貼って、衿元から膏薬の臭いがして、自分でも臭い。
きっと店に来たお客さんはもっと臭いかも知れない。
すみません。
しかし、当分、やめられない。
貼った部分をグーッと指圧されている気分になる。
つぼシールの名前は「ロイヒつぼ膏」。
変わった名前で、どういう意味かわからないけど、まあいい。
友弥人はヨーロッパへ行くのにも持って行くそうだ。
ヨーロッパの町で膏薬の臭いを振りまくつもりらしい。
by mikiris
第89回(2007年5月1日)*西洋美術のモチーフ
古いステンドグラスやオランダのタイルを見ていると、何度も同じモチーフがあるのに気づく。
騎士が竜を槍で刺している図、井戸の横に人が2人居る図、鯨の口が開いていて人が倒れている。
これらは聖書を題材にしたものだ。
オランダタイルはバイブリカルシリーズ(聖書シリーズ)と名前もはっきりしている。
しかし、絵を見ても、聖書のどの場面かを推測するのはなかなか難しい。
題材を調べるチャンスがあり、古い聖書を引っ張り出して、めくってみた。
私も友弥人も10年間、キリスト教の学校へ通っていたので、授業で聖書の時間もあった。
中学、高校では6年間、毎朝、授業が始まる前にチャペルで礼拝。
礼拝は当番の先生が聖書の一節を読んで、それにちなんだ話をして、賛美歌を歌う。
話が退屈なときは下を向いて、聖書を読みふけっていた。
聞くと、友弥人も友達も皆、やっていた。
何を隠そう、中学生の頃、私は聖歌隊の一員だった。
クリスマスイブには白いマントを着て、蒲鉾の台に釘を打ち付け、ろうそくを立てて、
先生達のお宅の前でクリスマス・キャロルを歌った。
だから、聖書にも賛美歌にも、他の人よりちょっとは知識がある。
「ダ・ヴィンチ コード」はキリストの子孫が居ると仮定した話だし、
「受胎告知」はマリアが天使から「お子さんができますよ」と教えてもらう場面を絵画にしたもの。
今、京都の近代美術館では「イエスとサマリア人」という題の日本画が展示してある。
情報が豊富なほど、人生が楽しい。
聖書に詳しいお客様に教えてもらったのと、自分で調べてみたのを何点かご紹介します。
騎士が竜を刺している図、サン・ジョルジュの竜退治
馬に乗った騎士が竜を刺していて、しばしば、後に娘がいる絵。
新約聖書、ヨハネの黙示録 第12章7節
大天使ミカエルが悪魔を退治する話から連想(?)した話。
騎士のサン・ジョルジュ(St.George)が竜を退治して、生け贄になる王女をたすける。
喜んだ町の人々はキリスト教に改宗する。
井戸のところに人が二人居る図、井戸端のイエスとサマリアの女。
ヨハネ伝第4章
イエスが旅の途中にサマリアを通り、ヤコブの井戸で休んでいた。
そこへサマリアの女がやってきた。
イエスは女に「喉が渇いたから水を飲ませてください」と言った。
サマリアの女は驚いて「ユダヤ人のあなたがサマリア人の私に頼むのですか?」
当時、ユダヤ人とサマリア人は交流がなかったので、お互いに避けていた。
しかし、イエスはサマリアの女に言った。
「あなたは何度、この井戸の水を飲んでも喉が渇く。私が与える水を飲んだら、もう喉はかわかない」
女は驚いて言った。
「救世主がやって来るという噂を聞いています」
「その救世主は私のことです」
倒れた男と口を開いた魚
旧約聖書 ヨナ書
神に用事を言いつけられたヨナは「そんな用事はやりたくない、嫌だ」と船で逃げる。
怒った神が嵐を起こす。
ヨナが「こうこう、こういう訳で神が怒って、嵐を起こしています」と説明すると
漁師たちが「コイツを生け贄にして海に放り込め。そうしたら神の怒りも収まる」
海に投げ込まれたヨナは鯨に食われる。
3日3晩後に鯨が岸にたどり着いて、ヨナを吐き出す。
この話はピノキオに似ている。
天使と人が居る絵
マタイ伝1章20節
この人間はヨセフでイエスのお父さん
ヨセフはマリアと婚約中で、マリアに子供が出来ました。
ヨセフは見に覚えがないので、婚約をやめて、身を引こうとします。
天使が現れて、「マリアの子供は神の子です。二人で大切に育てなさい」と言われている場面。
旅人と男(放蕩息子)
ルカ伝15章11節〜32節
あるところに父と二人の息子が居た。
弟が父に言った。
私はお金が欲しいので財産を分けてください。
父は二人の息子に財産を分け与えた。
弟はお金を持って家を出て、他所の町で遊び暮らして、数日で一文無しになった。
真面目に働いても続かず、結局、実家に戻った。
父は旅姿の息子を見つけて、喜び、最高の着物を着せて宴会を行った。
そんなことを知らずに畑仕事から戻った兄はとても腹が立ちました。
父は上の息子に言いました。
「せっかく遠くに行っていた息子が帰ってきたのだから、おまえも喜べ」
大昔から、出来の悪い子供の方が、出来の良い子より可愛い、というのが定石と知りました。
種まきをするイエスの絵
マタイ福音書13章1節〜(種まきのたとえ)
「良い種を蒔くのは人の子、畑は世界。毒麦を蒔くのは悪魔だ。
収穫はこの世の終わりで、毒麦は焼かれるだろう」
正しい行いをしていると天国に行けるし、
悪い行いをするものには天罰が下る、のたとえ話です。
悪は滅びるというシチュエーションはアクション映画の永遠のテーマ。
水戸黄門でも007でもジョーズでもダヴィンチコードでも、最後に悪は滅びる。
途中、やられてしまうのは善人?チョイ悪?どちらでもない人?
下はオランダタイルの聖書シリーズ
モーゼを描いた物もあり、テーマを探ってみると面白い。
by mikiris
第90回(2007年6月1日)*ただ今、初出し中
このところ、店の定休日は引越し屋さんをやってます。
実家の父が倒れて1年半、歯科の診療所に使っていた家が空き家になってます。
そこの荷物を整理中です。
父と母がこれからも使いたい物は車で実家へ運びます。
テレビとか電気ストーブ、湯のみ茶碗、壁に飾っていた版画など。
不要な物は大型ゴミや家庭ごみにする。
リサイクルに出せそうなもの、骨董の市に出せそうな物は横によける。
この家はかつて自宅兼診療所で家族で住んでました。
私が高校2年の夏に自宅だけ引越しして、元の家は診療所だけになりました。
しかし、引越しの時に要らない荷物は置きっぱなしにしてきたので、物置兼診療所になりました。
家を一軒、片付けるのは大仕事です。
昭和一桁生まれの両親は物を捨てないので、家の中はガラクタの山。
絶対に、二度と履けないカビの生えた靴が何箱もあったり、
家を改装する前に使っていた襖やら障子も取ってある。
両親は年を取ってしまって力仕事も無理。
親孝行な気持ちと、ひょっとして、お宝があるかも知れないと欲もからんで、休み返上で通ってます。
食器棚の中には旅先で買った「峠の釜飯」の入れ物、古い古い型ガラスのコップ、
昭和30年代の中古道具がいっぱい。
洋服ダンスには私の中学生の頃のセーターやら、両親が若い頃の洋服。
ウエストなんか50センチもない、超細身のワンピース。
父の夏物の白の麻のスーツもあった。
お揃いのパナマ帽もあるに違いない。
そういえば、私は小学生の頃にコケシのコレクションをしていた。
父や叔父が旅行に行くと、お土産にもらっていた。
家族で旅行に行っても、寄木細工やらコケシを買ってもらっていた。
ガラス棚いっぱいに溜まってた。
けど、何処に行ったんだろう? 欲しいものは見つからない。
自分の子供の頃の持ち物を、今頃に初出しするなんて、変な気分。
一緒に手伝っている友弥人は色々見つけて面白いらしい。
使い古しの応接セット、昭和30年代のステレオやレコード、ゴルフセット。
懐かしのシングル版やらLPレコードもある。
「黒猫のタンゴ」「オラは死んじまっただー」「ケメコの歌」
アラン・ドロンの「アモーレ」もある。
机や戸棚の引き出しにも物が詰まってる。
昭和40年頃に母がつけていた家計簿が何冊も出てきた。
ここで、又、手が止まる。
「こんな物、未だ残ってたんやー」
作業はなかなか進まない。
京都市は昨年の10月からゴミを出すのが有料になった。
家庭ごみは有料の黄色い袋を買って、それに入れないと持っていってくれない。
5リットルから45リットルまで袋の大きさが色々。
5リットルは1枚、5円。
45リットルは1枚、45円。
大型ゴミは京都市に電話をかけて、ゴミのサイズを言って、金額を聞く。
何月何日にどんなゴミを自宅の前のどの場所に置く、と細かく取り決めて、
コンビニで金額分のシールを買う。
当日の朝、8時までにシールに名前と日付を書いて、ゴミに張って指定の場所に出す。
とっても面倒で、お金もかかる。
応接セットの引き取りは椅子だけで3200円。
歯科の道具、材料、薬もある。
尖がった道具やらピンセット、コップやら抜歯のためのペンチもある。
父は技巧も自分でやっていたので、裏の技巧室には工具がいっぱい。
は〜、まだまだ片付けに時間がかかりそう。
定休日が週のうちで一番疲れる日なのは当分続きそうです。
by mikiris
第91回(2007年7月1日)*目が点
近所のスーパー、フレスコへ行ったところ、レジの女の子が新人でした。
学生時代にソフトボールかバスケをやっていたのか、投げる、投げる。
読み取り機を通して、カゴからカゴへ。
生姜、アイス最中もスポーン、スポーン。
最後にブナシメジをスポーン。 ナイッシュー!
「あほんだらー、人が買った食品を投げるなよー」
と思ったけれど、私は大人なので、投げられているのを気づかない振りをしました。
ある日、実家に戻ると母が留守。
なのに約束をしていたお客様がこられました。
母が戻るまで、私がお相手をして茶室で待っていただくことにしました。
お客様に出すお菓子がありません。
きっと、母はお菓子を買いに出かけて、遅れているのでしょう。
幸い、お客様が和菓子をお土産に持って来られたので、使うことにしました。
私の妹にお茶とお菓子を準備するように言いつけて、お茶室に戻りました。
しばらくすると、妹がお茶とお菓子を静々と持って来ました。
「粗菓でございます」
妹は見よう見まねで上品ぶったつもりだったのでしょう。
お客様は目を丸くして 「エッ」
私は大人なので、聞こえなかった振りをしました。
ある日、友彌人の母から電話
「あんたの保険を解約したいけど、解約できないのよ。そっちで解約して」
友彌人にとっては何のことかチンプンカンプン。
母が勝手に友彌人の死亡保険に入って、通帳、印鑑も勝手に作って、自分を受取人にしてたのです。
しかし、住所も名前も少しずつ間違っていたので、本人が行って証明しないと解約できないのです。
母は70歳をとっくに超えてから、こんな保険を勝手に契約して、
毎月の支払いが苦しくなってきて、解約することに決めたようです。
「あんたが、このまま引き継いでくれても良いけどー」とも言ってました。
友彌人が郵便局へ解約に行くと、
「こんな保険、絶対に支払われませんよ」と言われたそうです。
誰が一番長生きするか、解らないけど、何か、変やなー、と私たちの感想。
店には色んなお客様が来られます。
入ってきて、
「へー、本物のアンティークを置いてられるんですねー」という人がいたり、
「ここに飾ってあるものは、何処かから借りてこられてるんですか?」と言う人がいたり、
レース展の期間中など
「これは、外国から借りてられるのですか?」と言う質問が多い。
こんな時、なんと返事して良いものやら、悩んでしまいます。
友彌人が店番をしていると、こんな質問もないのですが、
私はどうも、軽く見られがち。
「えぇー、まぁー、はぁー」とうやむやな返事をする。
私の雰囲気と店の雰囲気が合ってないのかも知れません。
友彌人いわく、「なんや、失礼やねー」
色々とムズカシ。
相変わらず、子供の頃に住んでいた家の整理が続いています。
父は囲碁と絵画、ちょっとだけ骨董(ガラクタ)、ゴルフに興味があったらしく、
家の中にはそんなグッズが溢れてます。
囲碁と絵画に関する本やら美術館の図録が山積み。
古本屋に一括で売ってしまうのも惜しい。
一冊ずつチェックして、私の蔵書に残したり、売ったりしたい。
イリスのHPで売るには数が多すぎるのと、囲碁関係の本やビデオはほぼ新品。
骨董屋では扱えません。
結果、長年、敬遠してきたヤフオクに出品することにしました。
登録した日から売れると思っていたら大間違い。
確認、確認で出品まで1週間もかかってしまいました。
早速、美術館の図録やら美術本、ついでに私が買ったレコードも出品してみました。
売り初めて1週間も立たないうちに 悪い評価 をもらってしまいました。
「着払い450円で発送と聞いてましたが、実際には到着の時に450円払いました」とコメントが、、、
「ヘッ? 何これ?」と目が点。
相手方に最初に送料は着払いで450円だと連絡したのです。
その後、元払いでも良いですよと連絡しても、相手からは着払い450円が良いと返事。
言う通りにしたのに、何で悪い評価なのかワケが解りません。
何度かメールのやり取りをしているうちに到着時の支払いが470円だったことが判明。
着払い手数料というのがかかったのです。
郵便物を着払いで受け取ったことも、送ったこともないので、手数料がかかるなんて、初めて知りました。
こっちから送料を言わなければ良かったのかしら、、、
その間にも、この落札者はこれでもか、これでもかと悪い評価を追加。
160円の手数料を払って、20円を振込みしたら相手は満足。
友彌人は最初からもうコリゴリだそうです。
でも、美術本と図録がまだまだ有るので、まだまだ頑張ります。
7月は出品を少し休んで、8月から美術館の図録、美術本を出していきます。
数十年前から、京都で行われた展覧会の物です。
お探しの図録など有りましたら、お問い合わせ下さい。
by mikiris
第92回(2007年8月1日)*フィッツウィリアム博物館
ロンドンのリバプールストリート駅から鈍行列車で1時間チョイ、ケンブリッジcambridgeへ到着です。
普段なら学生で一杯の電車も、7月に入るとガラガラです。
ケンブリッジは京都に似ている。
町の南の端に駅があり、1300年代の建物もいくつも残っている。
そんな古い町並みの中に大学が有り、ノーベル賞学者を何人も出している。
町の中を加茂川ではなく、ケム川 cam river が流れている。
「ため息橋」なんてロマンチックな橋もある。
ケンブリッジは「ケム川の橋」という意味なのです。
町中に見所のある建物が溢れていますが、今回のお目当てはフィッツウィリアム博物館。
駅から歩いて15分。
教会を見たり、学校を見たり、パブやら喫茶店を見ながら歩いてると、すぐに着く。
建物が二つに分かれていて、渡り廊下で繋がっている。
入り口は両方の建物にあり、どちらからでも入れる。
入場料は無料。
1Fにヨーロッパ、アジアの陶磁器、ヨーロッパの金工が展示してある。
扇子コレクション Fan collection の部屋もある。
ヨーロッパの陶磁器は17-18世紀の物が中心。
イギリスのスリップウェア、オランダの白や染付けの皿や容器、オブジェ。
陶磁器は色々な窯ごとにまとめて展示してあるので、時代による変化が見て取れる。
ドイツのマイセンの人形が何ケースもあって、前からも後からも見られる。
東洋の陶磁器も素晴らしく、大阪の東洋陶磁に匹敵するくらい。
特に、朝鮮と日本の磁器が充実してる。
日本では柿右衛門の色絵が沢山あって、同じ絵付けのイギリスの磁器と並べて比較展示している。
2階にはエジプトのパピルスの展示室がある。
布や紙に染料で絵と字を描いた物。
染料の石も展示してあって、こんなところが美術館ではなく、博物館だと思ったりする。
その他、2階は14世紀から19世紀のヨーロッパの絵画が展示してある。
私は14-17世紀のイタリアやオランダの絵画が好き。
博物館にしては小さいけれど、展示ケースを図書室の書庫のように並行に並べたり、
壁一面に天井近くまで絵画を展示したり、見るものの数は多い。
各収蔵品が吟味されていて、じっくりじっくり見ていると、あっという間に時間がたつ。
建物の外観以外は撮影禁止。
館内の天井も素晴らしいけど、それすら写真を撮れない。
1Fにレストラン兼コーヒーショップがあるけど、雰囲気が今一。
プラのお盆を持って歩いて、プラの椅子と白くて丸いテーブルで食べる。
食事は博物館の向かいのパブ、Browns がお勧めです。
天井の高い広いパブの中は、古い掛け時計があったり、黒板にその日のお勧めメニューがあったり。
バーカウンターの後はお酒の瓶が並んでいて、ボーイさん達が生ビールを注いでいる。
夏休みの学生アルバイトなのか、若いボーイとウェイトレスが何人もいる。
数人、ベテランっぽい人もいる。
全員がイギリスの美男美女を揃えたみたい。
パブの雰囲気とその人たちを見ていると、自分達もまるで、美男美女の一員のような気がしてくる。
鏡張りの壁の方に目を向けるとギョッ。
当日のお勧め料理は「鱒のグリル(grilled trout)」だった。
一緒に行った、友弥人は「子羊のあばら肉のロースト(carre d'agneau)」を注文。
私は「海の幸の盛り合わせ」を注文しました。
長さ40cmの皿に茹でた魚、スモークした魚、蟹、鰊の酢漬け、貝類、サラダ、パンの盛り合わせ。
どちらもイギリスのレストランとは思えない、盛り付けと味。
店の雰囲気はオールドファッションのパブで純イギリス、
味はフランスでした。
ビールとソーダ水を頼んで、2人で20ポンドくらい。
感じの良いサービスと美味しい御飯、ここでお昼にして満足でした。
ケンブリッジの市内は昔からの個人商店と新しいショッピングセンターがあって、
買い物好きの人なら一日で足りない店の数。
残念ながら、私たちは観光とショッピングが嫌いです。
店が並んでいるのを見ただけで、近づかない。
「あー、お店がいっぱい。ここは寄らずに、ロンドンへ帰ろうー」
骨董屋にはちょっと顔出ししてみました。
18世紀の英国家具の店、東洋陶磁の店、博物館前の19世紀の英国陶磁器の店。
帰りも駅まで徒歩。
イギリス人は公園やら川の縁を歩くのが好き。
天気がよい日は皆、外に出て、長い散歩をしたり、草花や景色を愛でて休憩する。
この日は私たちも沢山歩いて、良いOFFの一日でした。
by mikiris
第93回(2007年9月1日)*プチ旅行
8月の最後の週、5日間の夏休みを取りました。
1泊2日での旅行を計画。
月曜定休がネックで行きにくかった美術館めぐりと友人の店を訪問するのが目的です。
まず、大阪の東洋陶磁美術館。
9月30日まで特別展で「安宅コレクション」を展示しています。
素晴らしい朝鮮の焼き物(12世紀ー18世紀が中心)が展示されている。
青磁も白磁も染付けも五彩も、このように美しいのを見たのは初めて。
研ぎ澄まされた美のオンパレードに見るほうもヘトヘト。
コレクションを収集するために大金を投じた安宅英一氏に感謝、感謝。
おかげで私はこのように美しい物をゆっくりと見るチャンスに恵まれた。
お昼はつるとんたん。
知る人ぞ知る、おうどんの美味しい店。
友弥人はカレーうどん定食(1,000円)、私は夏限定の冷麺(950円)。
昼時を少しはずすとすんなり入れる。
美味しいですー。
大阪では友達がビストロをやっていて、ここも美味しくて大好きな店。
この日は夜に豪華料理が待っているので、残念ながらパスした。
次ぎは山陽道で岡山県備前市へ、まずは山あいの閑谷学校へ行った。
日本最古の庶民の学校だけど、建物は書院造。
屋根は備前焼。
それまで晴れたり曇ったりの天気が、小雨になった。
シトシトと雨に煙る閑谷は何とも風情がある。
水曜日の午後、雨降りだからか、観光客は私たち2人だけ。
せっかくなので、書院造の建物に靴を脱いで上がり、廊下を一周して、
玄関やら道場を見て周った。
丸く変わった形の石塀が続いていて、中の砂を熱湯消毒してあるので、雑草が生えてこないそうです。
「建物だけ」と思っていたが、その場所から出るオーラがあって、聖地に来た感じがした。
行って良かったー。
備前焼に興味があったので、伊部まで行き、備前陶芸美術館へ。
現代・近世の作家から古備前まで、形も時代も色々。
私の周りではあまり見かけない備前焼。
赤黒い、土物と言うだけのイメージだったけど、室町、桃山頃のが好みだった。
伊部辺りは備前焼の窯元が並んでいて、煙突の高い家があちこちにある。
JR伊部駅はすごくローカル、ひなびた駅。とても好きな感じだった。
瀬戸内海沿いに少し戻って、兵庫県赤穂の温泉へ。
宿は簡保の宿を選んだ。
部屋は全室オーシャンビュー。
海の向こうに瀬戸内海の島が見えて、昼の景色も良いけど、夜は漁火漁の船の灯りが良い。
夕食は魚尽くし。
石カレイの姿作り(後で骨せんべいにしてくれる)、鱧しゃぶ、伊勢海老、
アワビと鱧のサラダ、蛸の釜飯、その他色々。
すごいご馳走でした。
レストランからも海が見えて、少しずつ日が暮れていく様子が美しい。
温泉好きだけど、湯気嫌い。
露天風呂好きだけど、全面開放、大自然を見ながら入るのでなければダメな私。
ここのお風呂は条件にぴったり。
ちょうど、皆既月食の日だったので、露天風呂に浸かりながら、赤いぼんやりした月を眺めた。
旅の2日目は岡山へ移動。
岡山の目当ては3つ。
オリエント美術館、林原美術館、友人のギャラリー。
3つとも小さいけれど、コレクションのレベルが高い。
嫌いなものが一点も無かった。
ロンドンの大英博物館で何時間も過ごしても、コレクション疲れをしたことが無いけれど、今回は疲れた。
安宅コレクション、オリエント美術館、林原の漆展。
最高の美術品の持つ力強さに圧倒されて、とても幸せ。
お昼は林原が経営するイタリアンレストランへ。
重厚な部屋で本格イタリアン。
瀬戸内の魚を使ったサラダも新鮮で、蛸があんなに美味しい物と初めて知った。
最後に友人のギャラリーでお目当ての品をゲット。
手織りの細かい柄の小さな絨毯。
店で座布団に使ってますが、早速、見た人から
「座布団にするなんて勿体ない。 絵みたいに壁に飾ったら?」と感想をいただきました。
「飾っても良し、使っても良し」、こういうの、一番好きです。
人生、仕事ばかりではアカンと気づかされることが近年、多々有り、休みを取った。
遊びで国内旅行をするのは、ナンと、20年ぶり。
世の中、こんなに楽しいこともあるんだー、とホンとに行って良かった。
仕事も大事だけど、遊びも大事。
次ぎは秋の味覚か、雪の露天風呂か、色々と思いは尽きません。
by mikiris
第94回(2007年10月1日)*初めての場所
ロンドンへは50回以上行っているけど、いつも同じ場所でウロウロするばかり。
この間は1週間の長滞在だったので、少し時間もあり、色々と出かけてみました。
まずはニューボンドストリート New Bond streetと ピカデリーサーカス Picadilly
Circus。
ニューボンドストリートはブランドの店が立ち並ぶ、高級ショッピングの通り。
エルメス、セリーヌ、バレンチノ、世界中のブランドが店を並べている。
道を歩きながら「へー、ほー」とウインドーショッピング。
この辺りで、店の袋を持って歩いている人はない。
買い物をする人は運転手付きのリムジンでやって来る。
バス停から歩いてくる人はただの通行人。
靴や洋服は日本の方がファッショナブルで進んでいる。
しかし、宝石類はすごい。
カルチェ、ピアジェ、デビアス。
ごついダイヤと素晴らしいデザインに見とれる。
ロイヤルアカデミーの方へ歩くと、バーリントン・アーケードがある。
イギリスで一番古いアーケード。
もし、この通りを山高帽のシャーロックホームズが歩いていても、違和感がない。
絨毯を敷いた通りの両側に銀器、宝石、時計、靴、カシミヤの店が並ぶ。
美術館で色々見るのも楽しいけど、似たような物に値段がついて並んでいるのも興味ある。
ポンドを円に換算するのに、数が大きすぎて、百万円の桁なのか、一千万円の桁なのか、
はたまた、億まで行ってるのか、、、、
いちいち計算していたら、前に進めない。
もちろん、ゼロが1個少なくても、衝動買いできない。
野次馬根性で見てるだけ。
近年、ヨーロッパでも黒真珠に人気が出てきて、特大の南洋球のネックレスなら1千万越え。
真珠は絶対、日本で買うべし。
綺麗な物を沢山見るのは、目と気持ちのリフレッシュの為にとても良い事だと思う。
美味しそうなケーキもウインドーショッピングして幸せな気分。
オックスフォードストリート Oxford streetへ戻って、セルフリッジデパートの方へ歩くと、
最近開店した プリマーク primark がある。
物価高のイギリスでは珍しい超激安の店。
その辺りを歩いている人は、皆、プリマークの紙袋を持っている。
裸足にサンダル、プリマークの大きな紙袋、こんな人がいっぱい。
外から見ると、2階の窓際に男の人の行列。
トイレの行列?
いやいや、試着室へ入る為の行列。
男でこれなら、女はどうなってるやら。
店内はとにかく、満員。
すごく広いけど、満員。
お買い物カゴならず、お買い物袋を持って品物を物色する。
タンクトップやTシャツ、ワンピース、スカート、こんなのが2-10ポンド。(500円−2500円)
2階は靴と紳士服。5-15ポンドの物が多い。
しかし、安いけど、安物。
1回洗濯したら、型崩れしそうなものばかり。
生地も縫製も安物で、着ていても一目で安物とわかる。
もう少し高くても質の良いものを買うか、このランクなら100円ショップ、300円ショップで買うほうが良さそう。
結局、手ぶらで帰りました。
イギリスではマークス&スペンサー Marks & Spencerが最大のスーパーで、自社ブランドで食品や衣類も作っている。
売り上げもイギリスで最高。
プリマークは近年、これについで2位の売り上げになった。
もう一つ、M&Sに迫る勢いの店はテスコ Tesco。
街角の小さな食料品店がどんどんテスコになってる。
店のオーナーは同じなので、フランチャイズで拡大している模様。
新聞にもM&Sとテスコで同じものを売っていたら、60%の品はテスコの方が安いと宣伝している。
確かに、水を買うなら、断然テスコ。
クロワッサンはどうかなー。
20円くらいテスコが安いけど、味はどっこいどっこい。
サンドイッチは完全にテスコが安い。
でも、M&Sの方がずっと美味しい。
ジュースもM&Sのは果汁100%だけど、テスコなら果汁60%。
テスコの売り上げはどんどん伸びて、M&Sを追いつけ、追い越せ状態です。
もっと安いスーパーならセンスバリー Sainsbury がある。
完全に地元密着型スーパー。
お客さんはインド人、アラブ系、アジア系、東欧の人が多い。
町でオレンジ色のビニール袋を持ってる人を沢山見かけたら、その辺りにセンスバリーがある。
高級食材はナイトブリッジ Knightbridge のハロッズの地下。
道を隔てた向かいにもハロッズのフードショップが出来た。
タルト一切れ、600円ほど。クロワッサンなど200−300円。(為替によって少々の変化はある)
スーツを着た男性やら、ハイヒールのマダムが買い物をしている。
私はハロッズよりオクスフォードストリート、プリマークの向かいのセルフリッジの方が好き。
1階にフードショップがある。
紀伊国屋のような感じ。
テイクアウトのおかずもパンやケーキ、紅茶やチョコも売ってる。
サンドイッチも美味しい。
スモークサーモンのサンドなどレベルが高い。
回転寿司のようなカウンターがあり、餃子やら風変わりな寿司が回ってる。
イギリスは早くから回転寿司があり、人気がある。
昼時、お茶の時間、いつでも混んでる。
日本のように1皿、100円じゃないので気をつけましょう。
一番上の階にはセルフサービスのレストランがある。
味も値段も満足度は50%だけど、何故か毎回、利用する。
一日中、食事ができるし、何人かで行って、お腹のすき具合がバラバラでも一緒に居られる。
便利です。
友弥人は保守派で、日本でも外国でも、いつも同じ店にしか行かない。
「せっかく気に入ってるのに、どうして他の店に行くのか」と言う。
私は何時もいつも、美味しい店を新規開拓したい。
今はネットという強い見方がいるので、暇があったら、国内、海外、美味しい店を探してる。
行った人の感想やブログも読んで、本当に美味しいのか何重にもチェックする。
骨董探しと美術館めぐり、美味しいものを食べるのが、今、一番の楽しみです。
イギリスではそれを目的に沢山歩いたので、帰国したら2kgも体重が減ってました。ヤッター!
by mikiris
第95回(2007年11月1日)*お菓子いろいろ
オランダではクリスマスの2週間前に親しい人に大きなクッキーをプレゼントします。
手の平の大きさから長さ1mの特大サイズまで。
手の平サイズなら自宅のオーブンでも焼ける。
特大サイズはベーカリーに注文。
オランダやベルギーの老舗のお菓子屋さんへ行くと、店内に大きな木型が飾ってある。
硬い木に動物や騎士、人物やモチーフの彫ったクッキー型。
1mのクッキーは種を押し付けた後、どうして剥すのか不思議だった。
ベロンとなって、せっかくの形が崩れそうだったから。
やり方がわかったら、なーんだ簡単。
大きな種を台の上に置いて、上から1mの型を押し付ける。
そのまま、オーブンへ滑らせる。
1600年代からパーティ会場では砂糖菓子が並べられていたそうだ。
その時代、オランダのパーティがどんなものか想像もつかないけど、
大人たちが砂糖菓子をつまんでいたのは事実。
3X4cmくらいの型で抜いた砂糖菓子。
ライオンやら羊、人や貝殻、いろいろなモチーフがある。
どんな色の菓子だったのか、興味がある。
白か薄い色か毒々しい色か、何を色粉に使っていたのかも興味ある。
菓子型の文化は世界にある。
日本にもお菓子用の木型がある。
お祝いの鯛、恵比寿さん、富士山、菊、イチョウ、梅の型。
特注品の子犬、三番叟、高砂。
落雁の型や生菓子の型。
1枚の木を彫った物、2枚組みの物、抜き型などある。
韓国にも同じものが有り、李朝型と呼ばれている。
その他、中国や東南アジアにも似たような木彫りの菓子型がある。
オランダのお菓子で有名なのはポッフェルチェス。
直径4cmくらいの平たい蛸焼きみたいな形。
味はフワフワのパンケーキで、粉砂糖とシロップをかけて食べる。
ポッフェルチェスの焼き型は丸い鉄板で、蛸焼きの型とそっくり。
近頃は冷凍ポッフェルチェスも出回っていて、スーパーに袋入りで売ってる。
関西人の家庭にたこ焼き型があるように、
オランダでは一家に一個、ポッフェルチェス型がある、はず ??
薄い煎餅の間にキャラメルを挟んだクッキーもある。
一袋に10枚くらいがセットで、500円くらいかな。
1枚食べたら、かなりヘビー。
キャラメルがどっしりして、煎餅と合わせると食感はにっちゃり。
卵パンもオランダ独特のお菓子。
どこのパン屋さんでも、スーパーでも売ってるけど、店によって全然、味が違う。
お客の出入りの激しいパン屋さんに行くと、皆、自分の要るものの他に卵パンを買ってる。
こんな店のは、しっとりして、ほんのり甘くて、薄味のマドレーヌみたいだ。
直径15cmくらいで五寸皿の大きさ。
真ん中が少し盛り上がってる。
ベルギーやオランダで、1人ランチや1人ディナーの紳士を良く見かける。
最後にタルトやアイスクリームの盛り合わせを美味しそうに食べて、締めくくってる。
旅先で友達と食事をしても、男どもは必ず、デザートまで進む。
女性陣の方が、「コーヒーだけでいいわー」と言うのが多い。
私たちも同じで、私は大抵、エスプレッソonly。
友彌人はダムブランシュ dame blanche かクレームブリュレ。
ダムブランシュはバニラアイスに熱いチョコをかけていただくお菓子。
クレームブリュレは柔らかいプリンの上にカラメルを乗せて焼いた菓子。
上のカラメルはスプーンでたたいて割るくらい硬くないといけない。
日本ででもケーキ屋さんでクレームブリュレを見つけると、
「これ、上のとこ、硬いですか?」と聞いてる。
硬いと言われると、自分用に2個買ってる。
日本で茶の湯が発達したのも、美味しいお菓子があったから。
茶の湯の盛んな町は美味しい和菓子の老舗がある。
お殿さんも武士も商人も、オジサンたちはお菓子好き。
しかし、日本の男達は大っぴらにこの事を公表してないのでは?
根付や印籠にお菓子のモチーフがないし、刀の鍔とかにもお菓子モチーフがない。
浮世絵や風俗画でお菓子の描かれているのを探してみるのも面白そう。
こんなして、又、美術館に行ったり、本を探す楽しみが増えた。
人生、知りたいこと、やりたい事がいっぱい。
by mikiris
第96回(2007年12月1日)*闘病記
私を知っている人なら「ウソやろー」とか「まさか」と言いそうですが、
11月に心臓の手術をすることになったのです。
自分が心臓の病気なんて、一番信じられないのは自分自身です。
10月の中頃に定期健診で近くの総合病院へ行ったところ、
「逆流してるみたいな音がしてるね。ちょっと、時間が有ったら、心エコーとってみる?」
なんて言われて、
心エコーって何それ?興味ある!
体験できるものはチャンスを逃がさじ、と受けてみた。
心エコーを取り始めて、なんか、先生の様子が変。
先生は「ちょっと、そのまま待ってて」と暗い部屋に私を置いてきぼりにして何処かに行った。
なかなか帰ってこないので、私は退屈。
しばらくしたら、別の先生を伴って戻ってきた。
エコーが終わって診察室へ。
エコーを勧めた先生は消化器内科だったけど、終わってからの説明の先生は循環器内科。
心臓の中の大動脈が大福饅頭のように脹らんで、いつ破裂してもおかしくないです。
手術のできる病院を紹介するので、翌日、すぐに精密検査に行くようにと言われました。
先生はすぐに大学病院の循環器内科に電話をかけて、手続きを取った。
「ARが△、○Xが△Xの患者さんで、自覚症状がなくて、すごく元気な人です」
「えー、心臓が悪いと言われても、、
私、こんなに元気で、昨日はサイクリングに行ったし、今日は40分のウォーキングでここまで来たし、
ずっと、水泳もやってるし、ビリーだってやってる。
普段から、エレベーターも使わずに階段で昇ってるのに、、、」
元気を強調して、色々と並べ立てても、先生は
「そんなこと言っても、ここに写ってるし。これがわかった以上、そんなことはやめて下さい。
今の状態は目隠しして崖の縁を歩いているのと同じ」
「でも、腫瘍と違って良かったね」
その後、紹介された大学病院へ精密検査に行った。
初診だったけど、最初の総合病院の先生が何度も連絡を入れて下さったそうで、
一日で検尿、レントゲン、心電図、心エコー、CTをこなした。
心エコーは2回目だったけど、CTは初めて。
造影剤を点滴して、撮影する。
点滴も生まれて初めて。
とにかく、今まで、一度も病気も怪我もしたことがない。
周りの人たちは次々と入院するけど、私だけは想定外。
ホントに、今年の夏だって、食欲もいっぱい、熱帯夜だって熟睡。
毎朝6時に起きて、仕事も遊びもこなして、毎日が忙しく充実していた。
休みをとって、日帰りの温泉もレンチャンで何度も行ったし、、、、
病院で「この1−2ヶ月で何か有りましたか?」なんて聞かれても思い当たることはゼロ。
「。。。5日続けて露天風呂に行ったのが、アカンかったんやろかー。。。」
この日の検査は夕方までかかって、先生がCTやエコーの画像をPCで見せながら説明してくれた。
心臓の中に薄い風船が入っている感じなので、飛行機に乗ったら気圧の変化で破裂するかも知れない。
走ったり、階段を駆け上がって、ドキドキしてもダメ。
「エコーの先生もびっくりしてたよ。」
「癌と違って良かったですね。手術したら直ります。
とりあえず、来週に検査入院してカテーテルをしましょう」
数日後に先生は自宅に電話をかけてきて大体の説明をしてくれた。
検査入院はヤメになって、2週間後に入院して手術に決まった。
心臓外科の先生とも会って、
「他に何処も悪くないのに、こんな事になるのは珍しい。
病気はアカンけど、早く見つかって良かったね。」
私と友彌人も
「狐につままれたような話やけど、まあ、見つかってよかった」
「12月1日からヨーロッパに行く予定だったけど、飛行機でロシア上空までもたどり着けなかっただろうね」
「皆に迷惑をかけることにならなくて、良かった」
私の性格なら、点滅の信号は走って渡れ、バスは走って乗れ、地下鉄の階段は駆け上がれ、、、
なので12月1日まで持ったかどうかも怪しい。
生まれて初めての入院だけど、親達が何度も入院しているので、要領はわかっている。
やりこなす事が山積みで、連日、大忙しの毎日を送ってしまった。
まず、診察の翌日から2日間、大阪で商談の通訳。
ホテルの部屋で座ったままの仕事なので、通勤さえ気をつければ大丈夫だろう。
日曜日はHPの更新で写真取りや加工。
これも激しい運動ではないからOKだろう。
月曜日は朝から入院準備の買い物で走り回った。
海外に仕入れに行く時の持ち物で、大抵は用が足りるが、
耐熱ガラスの急須やら、蓋付きの耐熱ガラスのコップ、洗面器など、コマゴマとしたものが要る。
パジャマは衛生上の配慮から病院のを借りるけど、ガウンやサンダルは自前。
暇だろうから、本も沢山買わなければ、、、
火曜日、水曜日は展示会の為の店内の模様替え。
入院前に思いつく限りの仕事はこなしておきたい。
帰ってから、ゆっくりしたいからね。
新しいウォッシュレットを買いに行って、取り付けた。今度は脱臭、乾燥付き。
レースの棚卸も終わった。
その他、気になる事は大体終わり。
この独り言も入院前に書いてます。
続きは11月末に退院してから。
なんせ、普段通りの元気な私が入院するのだから、退屈しそう。
友彌人は「手術までは検査で忙しいぞ」と言うけど、
私の関心は
「嫌いな食べ物が出たら、どうしよー。
カレーもラーメンもキムチも食べられへん。
牛丼とか、卵丼もかなんわー」
「アホー、そんなモン、出るか!」
出たかどうかは次の独り言を乞う御期待。
by mikiris